
医療・介護現場の腰痛|理学療法士が解説
ベッド上ケアの身体負担と作業改善
医療・介護現場で多い腰痛
医療機関や介護施設では、腰痛は非常に多い職業性健康問題の一つです。
特に看護師、介護職員、リハビリ職など、患者や利用者の身体を直接支える職種では腰痛の発生率が高いことが報告されています。
厚生労働省の労働災害統計でも、保健衛生業は腰痛の発生が多い業種の一つとして知られています。
その大きな要因の一つが、ベッド上ケアです。
ベッド上ケアとは、患者がベッドにいる状態で行われる介助やケアを指します。
例えば次のような作業があります。
体位変換
シーツ交換
オムツ交換
清拭
移乗準備
これらの作業は日常的に行われるため、身体への負担が積み重なる可能性があります。
ベッド上ケアの身体負担
ベッド上ケアでは、患者に近づいて作業する必要があります。
そのため、作業者は自然と前屈姿勢になることがあります。
例えば次のような姿勢です。
ベッドに身体を乗り出す姿勢
腕を伸ばして患者を支える姿勢
身体をひねりながら患者を動かす姿勢
このような姿勢では、腰部にかかる力が増える可能性があります。
さらに患者の体重が加わることで、腰部負担はさらに大きくなることがあります。
作業距離が腰部負担を増やす
ベッド上ケアでは、患者の身体を支えるために腕を伸ばすことがあります。
例えば
ベッドの中央にいる患者を支える
体位変換で身体を引き寄せる
シーツを整える
このような動作では、身体から患者までの距離が長くなります。
身体から対象までの距離が長くなると、腰部にかかる回転力が増える可能性があります。
この回転力は腰部モーメントと呼ばれ、
荷重 × 距離によって決まります。
同じ重量でも、身体から遠い位置で支えるほど腰への負担が大きくなる可能性があります。
そのため、作業距離を短くすることが重要になります。
ベッド高さの影響
ベッド上ケアでは、ベッドの高さが身体負担に大きく影響します。
ベッドが低い場合、作業者は身体を大きく前に曲げる必要があります。
この姿勢では腰部の筋活動が増え、筋疲労が起こりやすくなります。
一方で、ベッド高さが適切であれば、前屈角度を小さくすることができます。
そのため、ベッド高さの調整は腰痛予防の重要なポイントになります。
反復作業と累積負荷
医療や介護の現場では、同じ作業が繰り返されることが多くあります。
例えば
体位変換
ベッド上移動
シーツ交換
これらの作業は、一日に何度も行われます。
一回の負担は大きくなくても、繰り返されることで身体への負担が蓄積することがあります。
このような累積負荷は、腰痛の発生と関係する可能性があります。
そのため、作業の分担や補助機器の活用が重要になります。
ノーリフティングケアの考え方
近年、医療・介護現場では「ノーリフティングケア」という考え方が広がっています。
これは、介助者が人力だけで患者を持ち上げないようにするケアの方法です。
具体的には
スライディングシート
リフト
移乗補助機器
などを活用します。
これらの機器を使用することで、腰部への負担を減らすことが期待されています。
作業改善のポイント
ベッド上ケアの身体負担を減らすためには、作業方法と作業環境の両方を見直すことが重要です。
主な改善方法は次のとおりです。
ベッド高さを調整する
前屈姿勢を減らす
患者にできるだけ近づく
作業距離を短くする
身体をひねらない
回旋姿勢を避ける
補助具を活用する
スライディングシートなどを使用する
二人介助を行う
重量負担を分散する
これらの工夫により、腰部負担を軽減することができます。
理学療法士が関わる意義
理学療法士は、人の動作や身体の力学的負担を評価する専門職です。
医療現場の作業では、患者の安全と職員の身体負担の両方を考える必要があります。
理学療法士は
身体の動き
関節の使い方
筋肉の働き
などの観点から作業動作を分析することができます。
この分析をもとに、現場の状況に合わせた作業改善を提案することが可能です。
医療・介護現場の腰痛対策では、このような専門的な視点が重要になります。
まとめ
医療・介護現場の腰痛は、ベッド上ケアに伴う身体負担が関係することがあります。
特に
前屈姿勢
作業距離
反復動作
などの要因が組み合わさることで、腰部負担が増える可能性があります。
腰痛予防のためには、作業姿勢だけでなく、作業環境や作業方法を見直すことが重要です。
補助機器の活用や作業方法の工夫によって、身体への負担を減らすことができます。
参考文献
Nelson A et al.
Safe Patient Handling and Movement
Waters TR
Patient Handling in Healthcare
ISO 11228
Manual Handling
Hignett S, McAtamney L
Rapid Entire Body Assessment (REBA)
腰痛についてご相談ください
医療や介護の現場では、腰痛が慢性化してしまうケースも少なくありません。
しかし、腰痛対策は体操やストレッチだけでなく、作業姿勢や作業方法を見直すことが重要です。
PROWELLでは理学療法士が職場の身体リスクを評価し、医療・介護現場の作業環境に合わせた改善提案を行っています。
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