
上方作業と肩・腰の負担|理学療法士が解説
腕を上げる作業が身体に与える影響
上方作業とは
職場では、腕を肩より高い位置まで上げて行う作業が見られます。
このような作業は一般に「上方作業」と呼ばれます。
例えば次のような作業です。
天井配線の作業
設備メンテナンス
棚の上段からの荷物取り出し
高い位置での組立作業
住宅の天井工事など
これらの作業では、腕を肩より高く上げる姿勢が続くことがあります。
上方作業は肩への負担として知られており、頸肩腕症候群や頚椎症、肩こりなどに関連しますが、実際には腰部にも影響する可能性があります。
そのため、上方作業は肩だけでなく全身の姿勢から考えることが重要になります。
上方作業と肩関節の負担
腕を肩より高く上げる姿勢では、肩関節の周囲の筋肉が持続的に活動します。
特に関係する筋肉は次のとおりです。
三角筋
僧帽筋
棘上筋
肩甲骨周囲筋
腕を上げた姿勢では、これらの筋肉が腕の重さを支えるために働き続けます。
さらに、顔を上方にむけるため、頸部にも伸展ストレスがかかり、頸部の筋肉や関節、神経根などにストレスが生じます。
この状態が長時間続くと、肩周囲の筋疲労が蓄積したり、頸部の変性に繋がる可能性があります。
そのため、上方作業では肩こりや肩痛が発生することがあります。
上方作業と腰部負担
上方作業では、肩だけでなく腰部にも負担がかかることがあります。
腕を上げて作業する場合、身体は次のような姿勢になることがあります。
体幹の伸展(反る)
体幹の側屈
腰椎の過伸展←ここが腰痛の問題になることがあります。
例えば、天井に近い位置で作業する場合、身体を後ろに反らせる姿勢になることがあります。
この姿勢では、腰椎にかかる力が増える可能性があります。
また、腕を上げた姿勢では身体の重心が変化するため、姿勢を支えるために腰背部の筋肉が働き続けることがあります。
その結果、腰部の筋疲労が起こることがありますし、腰椎椎間関節の痛みにつながったり、脊柱管狭窄症にもつながるおそれがあります。
作業距離の影響
上方作業では、作業対象までの距離も重要な要素になります。
例えば
高い棚の奥にある物を取る
設備の奥側を操作する
といった場合、腕を上げながら身体を前に乗り出す姿勢になります。
このような姿勢では
腕の挙上
体幹前傾
作業距離の増加
が同時に起こります。
身体から作業対象までの距離が長くなると、身体にかかる回転力が増える可能性があります。
この回転力は腰部モーメントと呼ばれ、
荷重 × 距離
で説明されます。
そのため、作業距離が長くなるほど身体負担が増える可能性があります。特に側屈ストレス(側方に手を伸ばす)際には、腰の伸展と側屈回旋が強く加わるため、椎間関節ストレスが高まります。
作業時間と筋疲労
上方作業では、同じ姿勢が続くことがあります。
腕を上げた姿勢では、肩や体幹の筋肉が身体を支えるために働き続けます。
このような持続姿勢では、筋肉の疲労が蓄積する可能性があります。
さらに、作業が繰り返される場合には、身体への累積負荷が増えることがあります。
そのため、作業時間の管理や休憩の確保も重要になります。
上方作業の改善方法
上方作業の身体負担を減らすためには、作業環境や作業方法を見直すことが重要です。
例えば次のような改善があります。
作業高さの調整
脚立や作業台を使用する。ただし、脚立は上に立ってはいけません。転倒リスクが高まります。
作業距離の短縮
身体を対象に近づけるために、適切な脚立が必要です。
作業時間の管理
持続姿勢を減らす。想定よりも作業時間がかかることもありますので、時間管理が重要です
補助具の使用
工具や作業機器を見直す
リセットする
反り腰作業の前後は、屈曲方向へのストレッチがお薦めです。
これらの改善によって、肩や腰への負担を減らすことができます。
足元環境の影響
上方作業では、足元の安定性も重要になります。
脚立や台の上で作業する場合、足元が不安定になることがあります。
足元が安定していない場合、身体はバランスを保つために筋肉を緊張させることがあります。
この状態では
体幹の筋活動増加
姿勢の固定
動作のぎこちなさ
などが起こることがあります。
その結果、肩や腰の筋肉に負担がかかることがあります。
そのため、足場の安定性も上方作業の安全対策として重要になります。
理学療法士が関わる意義
上方作業の評価では、肩関節だけでなく全身の姿勢を考える必要があります。
理学療法士は身体の動作や姿勢を評価する専門職です。
例えば
肩関節の動き
体幹の姿勢
重心の位置
などを観察することで、作業中の身体負担を分析することができます。
さらに、人間工学の視点と身体機能の視点を組み合わせることで、現場で実行可能な作業改善を提案することが可能になります。
上方作業の安全対策では、このような専門的な評価が重要になります。
まとめ
上方作業は肩への負担として知られていますが、腰部にも影響する可能性があります。
特に
腕の挙上
作業距離
持続姿勢
足元環境
などの要因が組み合わさる場合、身体への負担が増える可能性があります。
そのため、上方作業では作業姿勢だけでなく作業環境全体を見直すことが重要になります。
参考文献
Chaffin DB
Occupational Biomechanics
McGill SM
Low Back Disorders
ISO 11226
Evaluation of Static Working Postures
NIOSH
Work Practices Guide for Manual Lifting
腰痛についてご相談ください
職場の腰痛は、ストレッチや体操だけでは十分に改善しないことがあります。
作業姿勢、作業距離、作業時間など、作業そのものの身体負担を整理することが重要です。
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